四畳半神話大系 第10話 四畳半主義者感想

前回までどのサークルを選んでも、裏組織の「福猫飯店」を選んでもバラ色のキャンパスライフをつかむ事ができなかった「私」。

今回はサークルに入らず人に関わらない大学生活を選択。

そしてとうとう、今までの時計巻き戻し現象の意外な(?)事実が明らかに!?

今回の声の出演はすごいですよ。なんと「私」(ナレーション)浅沼晋太郎さん一人!!

このアフレコ収録は寂しいですねー。通常でさえ、浅沼さんはナレーションが多いので一人で居残り収録していたという話が四畳半神話大系公式読本の声優座談会にあったというのに(笑)。


いきなり冒頭から四畳半に関する薀蓄語りです。まるで京極夏彦さんの小説のようです(笑)。

畳一畳や二畳の下宿って…ああでも、この不況下で一畳アパートがある(ネットカフェ難民よりマシらしい)という話も聞いたことがあるから、一笑に付すことができないのが寂しい世の中ですね。

ナレーション:四畳半こそ私の世界の全てである。
      それは私の信念でもあり、そして今は…客観的事実でもあった。
      …責任者はどこか?

四畳半神話大系 第10話 四畳半主義者感想

今までのいろんなサークル選択の失敗。とうとう「私」はサークルを選択しない道を選ぶのでした。

ナレーション:しかし私はどのサークルも選ばなかった。
      バラ色のキャンパスライフなどしょせん夢幻(ゆめまぼろし)である。
      私は四畳半という静謐な空間で自らを鍛える事にした。

それってタダの引きこもりでは? と思いましたが、大学には通学。ただし、親しい友を作らず、誰とも交流せずにインドア生活満喫しているようです。

ナレーション:かつて寺山修二は言った「書を捨てて街へ出ろ」と。
       しかし街へ出て何をしろというのだ。
       以降私は2年間のほとんどの時間を四畳半において過ごし、
       一部で四畳半主義者と呼ばれるまでになっていた。

「街へ出て何をしろというのだ」とはまたとても寂しい言葉ですね。「街へ出てもすることがない」というのは、非常に寂しい生活ですよ。

なんていうのかな、(外に対して)望む事がないってことですよね。全ての欲求が自分ひとりの中で完結しているという。安定しているけど変化の無い生活。それはちょっと…。

ところがある日下宿のドアを開けると、そこは四畳半につながっていたのでした。窓の外も四畳半。天井をぶち破ってもいきつくのは四畳半。私は四畳半から出る事ができない状態に。

水道から水が出るし、とりあえず部屋には魚肉ハンバーグとカステラがあったので飢えはしのげる状況。

そして、四畳半につながる先の四畳半にも同じく魚肉ハンバーグとカステラがあるのを発見。食糧事情はかたよってるけど食べ物に関する不安は無い模様。

思い出すのはこのカステラを置いていった小津という人間の事。どうやら今回「私」はサークル活動も裏組織にも属さなかった結果、小津には会っていないのです。

やっぱり小津は毎度偶然「私」と同じサークル等で知り合ったわけではなく、小津が入っている複数のサークル・組織・広い人間関係網に毎度「私」が偶然ひっかかってきていたのでしょう。

カステラは下宿にゴキブリ大量発生後、2階の住人(=樋口師匠)のところに出入りする小津がお詫びに持ってきたもの。カステラについていた手紙には

二階の部屋に出入りしているものです。
ゴキブリキューブなる兵器を作っていて誤作動してしまいました。
ご迷惑かけてすいません。
これ食べてください
                           小津

それは代理(以下省略)戦争の時に城ヶ崎先輩に使ったアレですか?

…小津と面識が無いこの世界でも、小津は「私」の生活を全力でダメに!? と思わず笑ってしまいました。

最初は気楽だった四畳半から抜けられない生活。時間ができたらやりたかった事をこなし、誰に気兼ねする事も無くのほほんと明るい妄想に浸っていた「私」。

けれども、だんだんこの生活に不満を感じ始めます。

ナレーション:いつでもその気になれば外へ出る事ができるからこそ四畳半に篭城できたのである。

そりゃそうですね。それに外へ出る事ができないという事は、新たな刺激が全く無いということですから。

そしてもう1つの原因は「生理的なもの」。この四畳半にはバストイレが無い。バストイレ無しの四畳半で篭城生活をするということは…つまりそういうことですね。

臭いにも耐え切れなくなって、四畳半を旅立つ事を決意した「私」。

結局この四畳半篭城生活が始まって1週間目に四畳半脱出を決行。早いといえば早いけど、遅いといえば遅い気がしますね。

数多くの四畳半を横切っていくうちに、ある四畳半の部屋から1,000円発見。各四畳半から1,000円を回収していく「私」。

そして各部屋の微妙な違いにも気づきます。「私」が古本市で買った本が別の四畳半には無く、買った覚えの無い別の本があったこと。今まで横切ってきた四畳半は全て少しずつ異なる「私」の四畳半。

ナレーション:ここは私のパラレルワールドなのだ。
       この何十日もの間、私はこれまでのさまざまな選択の中でありえた
       別の並行宇宙の四畳半を横切ってきたのだ!

今までの時間の巻き戻しは、実は過去へ戻ってやり直していたわけではなく、別の選択をした並行宇宙の過去時間へ戻っていたわけです。

部屋に残されている雑貨から、別の選択をした「私」の生活(今までの各話参照)を垣間見る「私」。

ナレーション:それにしてもどの部屋の住人もいかにも楽しげに見える。
       決してバラ色とまではいかないまでも、
       それぞれの四畳半がそれぞれに彩りにあふれているように見える。
       私にもこんな選択が可能であったのだろうか?

サークルに入らず、今の四畳半主義者生活を選択した「私」にとっては、羽貫さんは歯の治療で出会った歯科衛生士。城ヶ崎先輩は猫ラーメンで出会った人物。樋口師匠は下鴨幽水荘で見かけた人物。全て「私」にとっては関わりの薄い人物達。

でも別の四畳半に住む「私」の生活には密接な関わりがあって、今の「私」には通りすがりのあの人たちにも「私」が知らない別の一面があることもわかり…。

一人である事の気楽さを享受してきた「私」が、一人であることの空しさを感じ始める描写がいいですね。

今ここに悪友の一人でもいれば…

小津:なーにをやってるんですか。大脳新皮質に蛆虫でも湧きましたか?

ここの小津のセリフももちろん浅沼さん。小津役の吉野裕行さんの声とかなり似せてますよね。びっくりしました。声優さんはすごいですね。

1話では小津に「大きなカステラを一人で食べるというのは孤独の極地」と言われましたが、今回はその言葉通り孤独に泣きながらカステラをむさぼる「私」。

偶然ある四畳半で別の世界の「私」に遭遇しても、驚かれ拒否される「私」。

これでようやく第5話「ソフトボールサークル『ほんわか』」でいきなり「私」の部屋に出てきたヒゲもじゃ男の正体がわかりましたね。

4話「弟子求ム」で下宿に戻ったらお金が詰まったリュックが置いてあって、代理戦争の軍資金か!? と「私」が驚いたのも、この四畳半主義者の「私」が置いていったもの。お金があっても今の自分には使い道が無いことに気づいたから。

「各世界から集めた1,000円札の番号は同じじゃないのか? 」と疑問を持つ人もいるでしょうが、各世界の部屋がそれぞれ少しずつ違いがあったということは、お札の番号だって別である可能性が高いと思います。たぶん1,000円の入手ルートだってお釣りでもらったとか、銀行で下ろしたとか微妙に違っていた事でしょう。

何話かで「私」の部屋に置いてあったカステラが食べられていたのも、もちろん「私」の仕業(ややこしい…)。

電灯の集まる複数の蛾。「私」の部屋では1匹だったはずの蛾の数が増えていることで、蛾は並行世界を超えて集まる事ができる事に気づく「私」。

ナレーション:それに比べて私は一人で猥談し、一人で妄想を膨らますばかりだ。
     しかしそれもいまや続かない。

一人でいることの孤独。発展性が無いこと。それと比べて…。

たった一人の四畳半生活の無意味さを実感して、ようやく他の世界の「私」の充実ぶりを客観的に見つめなおす事ができました。あの無意義に思えた生活の中にあった意義を。

ところで今回こんな状況に陥った原因を「木屋町の占い婆の呪い仮説」をたてる「私」。

ナレーション:学生さんそろそろお困りであろう。人生を踏み誤ってしまった。

えっ、とうとう占い婆からも「人生を踏み誤ってしまった」というダメだし宣言!? 今までどんなときにもそれだけは言わなかったのに。

でもまだ「好機はあなたの目の前に」あるそうなので、ラストチャンスが残ってる?

次回最終回。「私」は好機をつかむ事はできるのか!?

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